天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蟻(2)

羽蟻

 繁殖期には、羽のある雌雄が現れて、空中で交尾し、雌は地上におりて羽を落して巣を作り女王になる。なんとも神秘的である。蟻塚あるいは蟻の塔は、巣を作る時に地中から運び出して積み上げた土砂である。


  対象はわがうちに在りかなしみを殺して蟻の匍ふと
  見るとき              加藤将之


  献身のごとくたつ幹をいきいきと晩夏の蟻はくだり
  ゆきたり             岡部桂一郎


  死骸(なきがら)を曳く蟻のため落蝉は夏熾(さか)んなる
  こずゑを選ぶ            前登志夫


  夏蝶の屍をひきてゆく蟻一匹どこまでゆけどわが影を出ず
                    寺山修司
  われに似るものは容(ゆる)さぬ壜(びん)に蟻を飼う少年の
  孤りなる眼も            平井 弘


[注]右上の画像は、https://www.google.co.jp/search?q=%E8%9F%BB&hl 
   による。