天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

夏木立(2)

横浜市俣野別邸庭園にて

 都会の大きな公園には、森や林があるので、夏の時期には木立に憩う人達を見かける。明治神宮新宿御苑小石川植物園などは、近所に住む人には、絶好の避暑地ともなろう。これほど大規模な公園でなくとも、お寺や神社の庭、裏山には夏木立が見られる。


  花はみな散りはてにけり夏木立みどりも春の色ならぬかは
                     藤原有家
  夏こだち軒ばにしげくなるままにかずそひ増る蝉の諸声
                       俊恵
  いざ住まむ夏の木立のこのもとにしばあをみゆく岡のべの里
                       慈鎭
  春分けし跡にしをりを残しおきて桜はしるき夏木立かな
                     宗良親王
  わくらばに訪ふ人もなき我が宿は夏木立のみ生ひしげりつつ
                       良寛
  鎌倉や御仏なれど釈迦牟尼は美男におはす夏木立かな
                    与謝野晶子
  大悲閣(だいひかく)君とのぼればほととぎす啼きてかなしき
  夏木立かな              吉井 勇


  濃緑の夏の木立のあせてゆくはげしき夢に倦みしさまにも
                     窪田空穂