盆(2)
13日夕刻の野火を迎え火とし、16日の野火を送り火とする。川へ送る風習が灯籠流しである。お盆には精霊棚をしつらえて野菜などを供える。野菜に牛や馬の形を作ることも。盆花には、キキョウやハギなどが用いられる。
家の外に焚ける迎へ火燃ゆとすれば雨ふりいでて消ちに
けるはや 伊藤左千夫
笹がくれ聖霊棚(しやうりやうだな)に灯ともりぬ母も
祖母(おほぼ)もいまおはすらむ 金子薫園
こころもち寒き盂蘭盆塋域(えいいき)の百の茶碗が
さざなみ立ちて 塚本邦雄
村いでて嫁きしをとめは盆の夜をまぼろしに見て幾夜
ねむりし 岡野弘彦
初盆と人は言へどもわが思ふ一切精霊の中に母居ず
石川不二子
窓の灯のとどくかぎりの濡れ土に足跡あらず 新盆の夜
糸川雅子
あわれなり小田もる庵におくり火の煙や民のおもひなるらん
新続古今集・後小松院
おくり火のほ影しらみて鴨川の盆の月夜ぞあはれなりける
太田垣蓮月