天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ハゼノキ

二宮町吾妻山にて

 ウルシ科の落葉高木。実から木蝋が採れる。秋の紅葉は目立つ。触れるとかぶれるので要注意。琉球から渡来し栽培されたものが野生化したという。「はじ」とも呼ぶが、山うるしの古名である。


     櫨紅葉見てゐるうちに紅を増す  山口誓子


  もずの居る櫨の立枝のうす紅葉たれ我が宿の物と見るらん
                  金葉集・藤原仲実
  うづら鳴く交野に立てるはじもみぢ散りぬばかりに秋風ぞ吹く
                  新古今集・藤原親隆
  櫨の木をかこみて松の若木立てり永久の嘆の此所にとどまる
                     土屋文明
  島山の櫨のもみぢの美しき朝をいでゆく真熊野の舟
                     岡野弘彦
  はらら散る櫨は落葉ぞおもしろき表(おもて)火のごとく裏べ
  寂(さ)びたる             北原白秋


  もみぢせる櫨の一もと炎えたちてひたひたと中洲に寄する
  秋の水                鈴木蓁子


  香貫山青すさまじく闌けたるを洩るくれなゐは櫨紅葉にて
                     玉城 徹
  櫨並木とぎるる果てに光射しわが生れし日の晴天の見ゆ
                     栗木京子