天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

灯台(1/2)

門脇崎灯台(城ケ崎にて)

 灯台は、岬の先端や港内に設置される航路標識で光波標識の一種。世界的に見てその起源は、紀元前7世紀にエジプトのナイル河口の寺院の塔上で火を焚いたことにあるらしい。日本最初の灯台は、839年に復路離散した遣唐使船の目印として、九州各地の峰で篝火を焚かせたことだという。


  灯台に火が点けばあそびゐしかもめ翼を垂れて
  いづくにか行く          金子薫園


  灯台を裏にまはれば目の前の霧笛鳴り出でめん
  くらひたり            半田良平


  対岸の白き灯台死に際のまなこにありて母海に入る
                   川口常孝
  無人灯台ひるも黄の灯のめぐりつつ岬をあらふ
  荒潮のおと            木俣 修


  水平線を見つめて立てる灯台の光りては消えてゆく
  もの思い             俵 万智


  灯台のひかり伸びゆく夜の海の闇深くして見ゆる
  ものなし             金子正男


川口常孝は無惨な戦時体験の短歌で知られるが、上の作品も不気味である。入水自殺する母を詠んでいるようだ。