天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

波の歌(4)

江ノ島にて

 浦波は、海岸に打ち寄せる波。いそ波は、磯に寄せる波。波の特性として、「立つ」「寄る」「返る」「越す」などが詠まれた。


  海人小舟帆かも張れると見るまでに鞆の浦みに浪
  立てり見ゆ         万葉集・作者未詳


  いくたびかいく田の浦に立ちかへる波に我が身をうち
  濡らすらむ        後撰集・読人しらず


  ねざめして聞かぬを聞きて悲しきはあらいそ波の
  暁の声               藤原家隆


  荒波のよせくる岸の遠ければかざまにけふぞふな
  わたりする             平 兼盛


  音羽川ゆきげの波も岩こえて関のこなたに春は来にけり
               続古今集藤原定家
  みそぎせし昨日のせぜの川波に秋たつ風やけふわたるらし
                玉葉集・小倉公雄
  いかで干すものとも知らず苫やかた片しく袖のよるの浦浪
                李花集・宗良親王