天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

大磯地獄沢のもみじ

大磯地獄沢にて

 JRの東海道線で平塚から大磯を通るたびに、山の紅葉の見ごろが気になっていた。電車では海側からしか見えないので裏側の情況はわからない。十二月も半ばになったので、もう見頃だろうとわが定番のルートをたどることにした。
 大磯駅から旧東海道沿いに化粧井戸を過ぎ高来神社まで歩く。神社を入って麓の右側の山路をたどり、地獄沢へ行く。もみじがまさに見ごろになっていて、ラッキーであった。殊にも高麗山と地獄沢の紅葉はすばらしかった。地獄沢の右手の急な崖路をのぼり八表山左手に見て湘南平を目指す。湘南平で一休みの後、こゆるぎの磯方面に向かう山道を下り、大磯駅にもどってきた。


     小春日の旧東海道松並木
     大磯や熟柿をのこす東海道
     力石ふたつあらはに銀杏散る
     猪の出るはいつ頃地獄沢
     いのししをしばし忘るるもみぢかな
     貼紙は「いのしし ちゅうい」地獄沢
     危険木くぬぎ黄葉の美しき
     水仙の咲く尾根道や地獄沢


  地獄沢のぼりてゆけば危険木ありとふ注意くぬぎの黄葉
  紅葉のなごりを惜しむ大磯の風に吹かるる皇帝ダリア
  大磯の山のもみぢを惜しみつつ『石川啄木の百首』読み継ぐ
  たくみなる小池光の鑑賞に涙こらへて読む啄木のうた
  夜更けて浅きねむりに見る夢はもみぢちり敷く散骨の山


  連句として
     紅葉の山にあまたの烏啼く
     西の空からせまる雨雲