天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

樅(もみ)(続2)

横浜市俣野別邸庭園にて

 樅の木は、調湿性に優れ、抗菌性があるにも関わらず特別な匂いがないため、おひつ、寿司桶、そうめんの箱、かまぼこの板、米櫃、割箸など食品関係の材にも用いられる。木目が真っ直ぐで切削などの加工が容易。精油成分には、さまざまな効果があることが、最近の研究で分っている。例えば、悪臭を消す、ホルムアルデヒドを除去するなどの作用である。


  はしき子ら降誕祭をうらまちぬ。樅の冬木を家にかざりて
                      石原 純
  しづかなる光満ちくる我が庭のひともと樅の影の中に居り
                      高安国世
  少年よ 季(とき)の気配にそよぐわがこころの樅よ
  ほろぼしがたし             和嶋勝利


  にんげんの時間は背骨のなかにある樅を見上げてわれ息深し
                      渡辺松男
  それぞれの内部(うち)に一本の樅の木を育てつつ既にするどし
  少女ら                真鍋美恵子


  ひとよりもおくれて笑うわれの母 一本の樅の木に日があたる
                      寺山修司