天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

伊豆・虹の郷

伊豆・虹の郷にて

 藤や石楠花の時期が過ぎ、紫陽花やあやめの季節にはまだ早い五月の中旬、どこか見どころはないかと探して、修善寺虹の郷に行ってみることにした。現在は東京ディズニーランドとほぼ同じ広さのテーマパークになっているが、その前身は、大正13年に町制施行記念事業として、もみじや赤松を植樹し整備した修善寺公園である。その後、昭和5年に起きた北伊豆地震で崩壊した池の跡地を利用して「花しょうぶ園」を、昭和53年には「しゃくなげの森」をそれぞれ期間限定で開園していた。昭和63年には日本庭園が完成した。その一角に、夏目漱石修善寺温泉「菊屋旅館」に滞在した時の部屋が移築された家屋がある。
 5月半ば頃の花の見どころといえば、薔薇園くらいのもの。藤や菖蒲の花の盛りに訪れるとよいはず。ちなみに伊豆を流れている狩野川と絵師として君臨した狩野派の狩野一族とは、関係があるらしい。初代狩野正信は伊豆狩野氏の末裔だと伝える。


     谷間に薔薇の花咲く虹の郷
     風薫る風早峠天城越え
     串刺しの鮎の塩焼き吟醸酒
     まだ小ぶり鮎解禁の鮎を食ぶ
     渓流の音に想へり鮎の群
    

  頼朝が遠流になりし伊豆の国蛭ヶ小島へ案内板立つ
  薔薇咲きて石楠花は散る谷間にあやめの咲くを待つ虹の郷
  伊豆の国虹の郷には漱石が住まひし部屋を移築せし家
  漱石が住まひし部屋を移築して什器、掛け軸、床の間に置く
  イギリス風カナダ風の家ありて谷底に見る日本庭園
  そこここに樹の切り株の無残なる山肌あらは虹の郷といふ
  谷間の木々切り払ひ薔薇菖蒲植ゑて咲かせる伊豆虹の郷
  しやうぶ田を囲む電線あらはなり虹の郷には猪(しし)出づるらし
  風かをる窓際の席バスが行く天城月ヶ瀬谷間の道
  右手には風早峠バスに行く湯ヶ島温泉ほたる飛ぶ里
  バス停に降りて探せる白壁荘道に迷ひて橋渡りゆく
  串刺しの鮎の塩焼き食うべけり狩野川の鮎解禁の日に