天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

秋雑詠(3)

箱根旧街道

 久しぶりに箱根旧街道を歩いた。といっても全行程ではなく、湯本から畑宿先の見晴茶屋まではバスで行き、そこから元箱根まで徒歩にした。全行程を歩いたのは随分前のことで、確か4時間ほどかかったと記憶している。今回の歩行距離は3.7キロ。それでも石畳の多い山道を歩くのは、滑らないように神経を使った。芦ノ湖では海賊船にのり湖尻までゆき、そこで一泊。大涌谷にものぼった。何度も来ているので特段の感激は無い。ただ芒の穂の間から見える黒い富士の横雲は風情があった。


     旧街道秋木洩れ日の石畳
     笹子鳴く旧街道の石畳
     のぼり来て峠の茶屋にところ天
     横雲の空に黒きは秋の富士
     穂薄の大涌谷に富士を見る
     秋ふかむ大涌谷の黒たまご


  九頭龍の伝説告ぐる芦ノ湖の海賊船は鈴なりの人
  いにしへの噴煙の瘡(きず)のこせるか赤肌さらす
  ヒメシャラの木々


  咽喉黄なる小鳥は何をつひばむや花の終りし石楠花の下
  酒匂川落ち鮎釣りの岸の辺に出むと分け入る穂薄の原
  俯きてベンチに帰る三振の打者の背に吹くブーイングの風