薬を詠む(3/6)
糖衣錠あるいは色の華美にすぎてころがり易し薬包紙より
斎藤 史
アンプルのうすき破片を事務的に寄するとき鈴のごとき音する
斎藤 史
*アンプル: ガラス製の首のくびれた小型の容器。口部はガラスを溶かして
密封する。おもに注射液を入れるのに用いられる。
耳鳴りのする寒き夜一粒の黄の錠剤を口にふくみつ
木俣 修
何か言ふ人もあらねばこぼしたる黄の錠剤をかき寄せてをり
大西民子
*初句二句は、作者と別れた夫のことを念頭においていよう。
どっちかというとゆかいさ ぱらぱらとペーパーカップいっぱいの錠剤
加藤治郎
*鑑賞に困る作品である。愉快かどうかは、錠剤と関係しているのだろうか。
自暴自棄の心境か。作品の評価を鑑賞の仕方に預けているではないか。
行き行けぬ雪山はるかに想いいて乳鉢(にゅうばち)に摺る白き薬粒
小林敬枝
*乳鉢: 固体を粉砕または混和するために使用する鉢。乳棒(にゅうぼう)と
共に使用される。