蕪村俳句と比喩―暗喩(隠喩)(4/5)
心太(ところてん)さかしまに銀河三千尺
*ところてんを啜り上げる時の豪快さを大げさに比喩した。
いな妻や八丈(はちぢやう)かけてきくた摺(ずり)
*きくた摺: 福島県菊多特産の小紋の稲妻模様で、八丈縞の一種。前書きに「かな河浦にて」とある。神奈川沖から八丈島にかけて閃く稲妻を菊多摺りに見立てた。
鳥尽(つき)てかくるる弓か三日月(みかのつき)
松島の月見る人やうつせ貝
*うつせ貝: 肉が抜けて空になった貝。松島の月の美しさに心奪われている人をうつせ貝に喩えた。
月の句を吐(はき)てへらさん蟾(ひき)の腹
雨乞(あまごひ)の小町が果(はて)やおとし水
釣上(つりあげ)し鱸(すずき)の巨口玉(たま)や吐(はく)
札(ふだ)菊(ぎく)や踏(ふみ)こたへたる鶴(つる)の脚(あし)
*札菊: 品評会で品種名などを記した札を付けた菊。その菊の様子を細い脚で体を支える鶴に喩えた。
白菊や呉山(ござん)の雪を笠の下
*白菊の様子を二句以下の情景で喩えた句。
三日月も罠(わな)にかかりて枯野哉