わが歌集からー花(5/10)
球根にやどる命をまざまざと見せて咲きたるアマリリスあはれ
アマリリス咲きて朽ちたる後の世のさみしからずやわが部屋の隅
おーい雲よそこから富士はどう見える菜の花畑のわれは呼びかく
金色の菊花の紋はひかりたり二度と動かぬ「三笠」の舳先
清楚とは冷たさと知る手を伸ばし指に触れたるはくれんの花
枝ぶりは短く太し手弱女とふ名にふさはざる桜咲きたり
ケータイに撮せる人らあまた寄る楊貴妃桜夜をにほへり
ひときはにしだれて咲ける花ありて雨情枝垂の名札かかれり
泉流泉さちよの奉納の「静の舞」に散る山桜
声若き読経聞こゆる長谷寺の山になだるるあぢさゐの花
アルテシモ深紅の薔薇の垣根越し文学館の青き屋根見ゆ
首ふりの常ならざれば落ちにけりほの吹く風にささゆりの花
丹精の盆栽ならびひさかたの光まとへる黄菊白菊
時くれば固きつぼみの梅ヶ枝は咲きにほふらむ墓前に捧ぐ
早咲きの梅めでて聞く歌謡ショウ “泣いて私の首筋かむの ”
何の木と問ふ 解の札開けたれば日向水木の花かがやけり
谷戸拓き移築になりし古民家にただれて咲ける赤き満作
幣辛夷うすむらさきに咲きにけり正座に耐ふる写経の男女
霧雨にけぶる河原の草もえて桜並木は花の賀茂川
上賀茂の馬場の白砂雨にぬれあかく枝垂るる斎王桜
うすあかき花咲く杜にまつられて別雷大神(わけいかづちのおほかみ)ゐます
婚礼の人らみちびき巫女きたる神社の庭に花の雨降る
玉なして谷戸に咲きそむ白の上に青うすづけるあぢさゐの花
パスカリはベルギー生まれ四季咲きの白く匂へる大輪の花
蠅来たり花の匂ひに酔ひしるるドイツ生まれの薔薇 サン・スプリット
高貴なるかをりなりけり庭垣を人ふりかへる梔子の花
十年に一度は見るか変異種の紅筋山百合まぼろしの花
くれなゐを蕾にかくし眠りたりニンファエア・ルブラ 夜咲きの性
うす青き花が囲める黄の蘂のニンファエア・コロラータ 昼咲きの性
幾人が梢に咲きて会ひにけむ半身不随の空挺桜