天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー魚介(3/7)

 鱈: 北半球の寒冷な海に分布する肉食性の底生魚。日本近海では北日本沿岸に

   マダラ、スケトウダラ、コマイの3種が分布する。

 鮭: シロサケ、アキサケ、アキアジなどの名称がある。なお地方名も多い。

 鰊: 別名、春告魚(はるつげうお)。冷水域を好む回遊魚。北海道ではニシン漁

   で財を成した網元による「鰊御殿」が建ち並ぶほどであった。1955年頃から

   漁獲量は激減し衰退した。原因としては海流あるいは海水温の上昇が大きい

   らしい。

 

  仙台の冬の夜(よ)市(いち)をふたりゆき塩辛き鱈を買ひし思ほゆ

                     木俣 修

  ばらまきて半旗のごとき鱈を干す陸(くが)の末尾の岩昏きかな

                     安永蕗子

  くりやべに鮭の片身をさげたるが幾日(いくか)になるとひとりごちつつ

                      岡 麓

  幼子は鮭のはらごのひと粒をまなこつむりて呑みくだしたり

                     木俣 修

  日の光薄き浜びの板びさし春の鰊は燻(いぶ)し了へにし

                     北原白秋

  はたざをを培(つちか)ひたりし吾が過去の何ぞ鰊を焼けば思ほゆ

                     吉田正俊

*はたざを: (旗竿)アブラナ科の越年草。山野・海辺に自生。茎は直立し、

高さ30~90センチメートル。作者はこの越年草を育てた理由が分からないという。

鰊との結びつきも読者には不明。

 

  なき人を思ふ心のしきりなる今宵更けゆき鰊を焼かむ

                     小暮正次

  いつしかに厚岸(あつけし)の鰊食ひなれてこの古き町は新しく富む

                     樋口賢治

厚岸町にある日本栽培漁業協会厚岸事業場では、開設された昭和56年当初からニシンの種苗生産と放流技術の開発に取り組んできた。その効果で町が新たに豊かになってきたのだろう。

f:id:amanokakeru:20200724064855j:plain

鱈 (webから)