天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー菓子・スイーツ(2/4)

  一つありし求肥(ぎうひ)を食ひて くきやかに<無>があらはるる夜の白き皿

                     高野公彦

求肥: 和菓子の材料のひとつで、白玉粉または餅粉に砂糖や水飴を加えて練りあげたもの。

 

  幼らの丸く整へし草餅の大小は掌の大小にして

                     東野典子

  ひざに置く信玄餅はしんみりと父を追ひたる信玄のこころ

                    池谷しげみ

信玄餅は、武田信玄が出陣の際、非常食としたものが元という。現在のものは黒蜜ときなこをたっぷりとまぶして食べる。

 

  仄淡く蓬の匂ひふくみもつ草餅もちて父母たづね来し

                     南 静子

  好みたる道明寺餅の香に立てる柔き葉ごとをつまみて喰ぶる

                     大滝貞一

*桜餅には、「長命寺」と「道明寺」の二種類がある。道明寺餅は、もち米を蒸して乾燥させ粗挽きした道明寺粉で作った餅を桜の葉でつつんだもの。関西風(上方風)である。

 

  母を看る話やうやく纏りて皿の外郎四つが減りぬ

                     又野 萋

外郎(ういろう): 米の粉に黒砂糖などをまぜて蒸した菓子。

 

  東京生れには望郷の味がする桜餅かなみどり葉も粋

                     築地正子

  よもぎ餅持ち来し友と幼名で話せば春の野辺のたちくる

                     丸山郁子

 

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求肥 (WEBから)