天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

食のうたー菓子・スイーツ(3/4)

  失恋の<われ>をしばらく刑に処す アイスクリーム断(だ)ちという刑

                     村木道彦

  ゆふぐれの雨明るけれ氷菓にも蛇にも見放されつつ歩む

                     水原紫苑

氷菓(ひょうか): アイスクリーム、シャーベットなど、氷菓子の類。下句に唐突に蛇がでてくるところが面白い。実際に目の前を蛇が横切ったのであろう。蛇は作者を無視して行ったのだ。

 

  行きかへりあいすくりんを食めるなり土佐はよいとこ昔の味する

                    大塚布見子

  みずいろのゼリーがあれば 皿のうえにきままきまぐれのみつるゆうがた

                     村木道彦

  奪われることのたやすさ吸われゆく色鮮やかなゼリーのゆくえ

                     田中 槐

*作者が食べていたゼリーが横取りされて吸われてしまったのだ。

 

  ウイスキー匂ふゼリーに包まれし桜桃(あうたう)の核(かく)救ひのごとし

                    楠瀬兵五郎

  幾年も味わうなかりしチョコレートも投げられれば分ちて食う

                     吉田 漱

  チョコレートひと口噛めば恋の味ふた口妻の味とこそ知れ

                     岩田 正

*チョコレートは奥さん(馬場あき子)も作者も好んだスイーツであり、二人の恋の仲立ちであったようだ。

 

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