思想(5/5)
思想とはかくも無言に泥流に押し戻されているひとつ舟
蝉木立ぬけて来たれば思想よりせつなき飢ゑをわれはもたざり
萩岡良博
*鳴きしきる蝉の木立を抜けてきて、自分にとっての思想の大切さを痛感したのだ。
ユニットバス膝を抱えて君は言う「もうボクたちにシソウは来ない」
大野道夫
捨てられしビラが運河に浮かびをり思想よ思想重ければ沈め
三浦好博
*ビラにはある思想を展開する文言がびっしりと書かれていたのだ。
どしがたき悪癖として意味を追う意味が即ち思想でありし日
大島史洋
*意味を追うことが悪癖と言われると、何を議論したらよいのか? 思想の中身を理解するには、意味を確定できなくてはならないはず。
戦はぬ思想に滅びけるものの裔(すゑ)が立つなり今しその地に
温井松代