自転車をならべて親子のゆくみれば子の自転車の真新しけり
金沢邦子
白き霧ながるる夜の草の園に自転車はほそきつばさ濡れたり
高野公彦
風いでて波止(はと)の自転車倒れゆけりかなたまばゆき速吸(はやすひ)の海
高野公彦
街川に自転車いくつ水漬きをり死ぬには永き歳月が要る
高野公彦
*上の高野公彦の三首は、いずれもよく知られた歌であろう。
分身の如き思ひに近づきぬ夜の駅前われの自転車
奥村晃作
*よく分かる感覚。共感できる。
宙吊りにされし店内の自転車が運命を待つごとく華やぐ
長澤一作
*この歌にも共感できる。
神田川の潮ひくころは自転車が泥のなかより半身を出す
大島史洋