天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

乗りもののうたー自動車(2/4)

  故わかぬ腎出血にむかい行く都の北東へバス乗り継げば

                       岡井 隆

*医師・岡井隆のある日を詠んだものだろう。

 

  柱上トランスがこぶのように見える角を曲がり正午到着のバスが出てくる

                       佐藤信

  ゆったりと過ぎしトラックがそびらへて小石を砕くつぶさなる音

                       田谷 鋭

*「そびらへて」とは、馴染みのない言葉だが、想像するに「後ろ(背)を見せて」という意味だろう。

 

  列車に二十時間トラックに二里揺られ来て白飯(しらいひ)の湯気は眼鏡曇らす

                       葛原 繁

  人間のごとき感じに括(くく)られて売らるる木々をトラックに積む

                       大野誠

*上句の直喩が生々しくギョッとする。

 

  警官ら点検しゐる道のはた人轢きて来し車しづけし

                       大野誠

  受身なるものの素直な態(さま)にして給油されゐる黄のくるまあり

                      真鍋美恵子

 

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