犬を詠う(6/12)
犬はいつもはつらつとしてよろこびにからだふるはす凄き
生きもの 奥村晃作
顔中に毛の生(は)える犬をカワイイと幼(をさな)言ふああ
そのしんじつの声 奥村晃作
イヌネコと蔑(なみ)して言ふがイヌネコは一切無所有の生を
完(まつた)うす 奥村晃作
吠えるぞと思ふに犬の口もとが憎げに動きあと凄き声
奥村晃作
柴犬ベンケイ甲斐犬リュウがこもごもに唇(くち)なめくるる
夢に来たりて 道浦母都子
誰も彼もいなくなりたる公園に木霊となりて犬とわれ居り
道浦母都子
はじめから叱られに来るわが犬のななめの頭(かしら)ひとたびは搏つ
佐波洋子
奥村晃作は犬を飼っているのだろうか? 犬に溺れるような態度ではなく、覚めた目で詠っている。
道浦母都子の二首目で「木霊となりて」をどう鑑賞するか? まさか呼びあっているわけではないだろう。
佐波洋子の態度は、よく分る。
画像は日本犬種ひとつである甲斐犬。発見されたのは昭和4年(1929年)というからかなり新しい。発見された地方に因んでと命名された。主人を生涯一人に定めてずっと連れ添う忠実な性格。気性が強く、鹿やイノシシを狩るための猟犬として飼われていた。