天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蕨(わらび)

 ワラビ科に属するシダ。全国の日当たりの良い草原に見られ、山菜として広く親しまれる。

 

     早蕨(さわらび)を誰がもたらせし厨かな    高浜虚子

     真下なる天竜川や蕨狩       富安風生

     金色の仏ぞおはす蕨かな     水原秋櫻子

     月日過ぐ蕨も長けしっこと思へば  山口誓子

     早蕨を摘みゐてミサに遅れ来る   辻岡紀川

     一の谷いつか二の谷蕨狩      辻田克己

     死火口の底へ降りゆき蕨摘む    岸田潮二

 

  煙たち燃ゆとも見えぬ草の葉を誰かわらびと名づけそめけむ

                    古今集・素性

  みやま木のかげ野の下のした蕨もえ出づれども知る人もなし

                  千載集・藤原基俊

  ほそほそし伊豆の蕨も楽しかりわが胃の中に入りをはりけり

                      斎藤茂吉

  夏草の中に蕨もしげりつつ小さき丘(をか)の君がおくつき

                      松村英一

  この丘にわらびを掘りて幾世代過ぎ来し生を今に伝ふる

                      柴生田稔