清洲城
いしぶみの拓本の後つややけく青葉にかげる清洲古城趾
天守閣仰ぎて朱き橋わたる朝を目覚めし白き睡蓮
燃え落つる城想へるや庭にたち憂ひ顔なる濃姫の像
信長といへば「敦盛」扇もち片足あぐるこの展示室
鼓打つ濃姫の顔青ざめて父の決意を「敦盛」に知る
敦盛の一節謡ひ出陣す四万にむかふ三千の兵
青ざめし濃姫の打つ小鼓に敦盛を舞ふ いざ桶狭間
義元の刀ぶん捕り名を彫し織田信長の気負ひ残れり
複製の鎧、兜を並べたり遺品ひとつも無き清洲城
信長の花の清洲は野となりぬ尾張名古屋の金の鯱(しやちほこ)
浮かび来し河鵜烏をにらみつけ飛び翔ちゆけり五条川筋
拓本の後つやめくや木下闇
いしぶみの拓本採りし木下闇
睡蓮の朱き目覚めや清洲城
火縄銃汗とめどなき天守閣
浮かび来し河鵜を嗤ふ烏かな