天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

一夜城址

蜘蛛の井

 昨夜は十一時頃、先日買った浪曲河内音頭「東西男くらべ」「雷電八角」を聞いた。歌い手は京山幸枝若。「花は祇園に清水に 嵯峨やお室や九重の・・・」「やぐら太鼓は何所で鳴る 五丈三尺空で鳴る・・・」全部七五調である。梁塵秘抄に「・・わが身さへこそゆるがるれ」とあるが、河内音頭こそまことに聞いているうちに身体が自然に動き出してくる。部屋を閉めていたが近所に聞えたかも知れない。
 昨日の産経朝刊で見た小田原石垣山の一夜城跡のコスモスに惹かれて、ここにやってきた。根府川駅から関白農道を頂上まで歩いた。帰りにバスに乗ってからわかったのだが、小田原駅六番のバス乗り場から観光回遊バスがでていたのだ。九月から十一月の土、日、祝日の当日限りだが、百円で乗り放題なのだ。これに乗ると、小田原駅から小田原城、中宿町、松永記念館、板橋駅、一夜城、小田原漁港、小田原文学館、御感の藤棚、万町、青物町、お堀端通り、そして小田原駅に戻る巡回コースである。


        ヘリコプター秋の朝日を侵したり
        一瞬の静寂鵙の啼きし後
        一夜城へ関白道や青蜜柑
        地に太る芋の畑や月見草
        コスモスの栄ゆるままに一夜城
        煙立ち百舌鳥の猛るや一夜城
        コスモスの花のいのちも一夜城
        茶の花のこぼれてさみし野面積
        野面積石垣くづれ石蕗の花
        井戸曲輪跡の擂り鉢鵙の声
        秋日差すり鉢状に石のこる
        一夜城天守の跡に百舌鳥の声
        そこここに蜘蛛が井を張る天守
        秋の日のかつと照りつけ一夜城

   四百年経ちて崩れし野面積本丸跡に百舌鳥高啼けり
   秋空の雲見上げたり丈高き松十四、五本の西曲輪跡
   丈たかき松十四、五本が生ひ立てりあからひく日の西曲輪跡
   金色の光にわが世謳歌せり鉄路に沿へる泡立草は