天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

『おりいぶ』

 俳句結社「古志」では、長谷川櫂主宰が飴山実に師事したこともあって、『飴山実全句集』がメンバー必読の書となっており、毎号、鑑賞文がのっている。で、小生も以前から読み始めているのだが、別の本に寄り道するため一向にはかどらない。やっと第一句集の『おりいぶ』を読み終えた。
戦争帰りの沢木欣一、金子兜太、原子公平などに俳句を学び、膝を交えて議論もしたということで、彼等先達の影響が顕わである。大涌谷を詠んでも次のようになる。
        少年が倒立硫気の山肌で
        女学生と硫黄の噴煙(けむり)重ねて撮る
        硫黄結晶する山肌で喰うむすび

これは当然句の作り方に起因する。例えば、
        雪上に鰤割く斜視の青年が
「斜視の青年が雪上に鰤割く」という散文を倒置したもの。理解し難い句もでてくる。
        歳晩の旗が藻魚群の中の一人
        枯れ斜面雀にピアノ線の足
二番目は、普通なら「枯れ斜面雀の足にピアノ線」というはずではないか?
 以上は会社帰りの東海道線の中で気のついたこと。で、この日記は、鰤大根、烏賊明太子を肴に芋焼酎のロックを呑みながら打ち込んでいる。

        銀杏ちって歩みゆたけし九段坂
        献木に山茶花まじる社かな
        白鳩のむつめるさくらもみぢかな
        空間にさくらもみぢのしんとあり
        芋焼酎ロックやまざる鰤大根