天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

魂魄

 五月の連休が明けた。五月の靖国神社拝殿社頭掲示のコピーをもらってきた。陸軍少尉の遺言の前に置かれている次ぎの明治天皇の御製は、明治37年作。

  たたかひに 身をすつる人 多きかな 
  老いたる親を 家にのこして


なんだか人ごとのようで、面白くない。日本国を代表する天皇の命令のもとに戦争し、戦死したのに。「をりにふれて」という前書があるが、多分当時は一般人には公開されなかったのではないか。平和ぼけの現代でも歌の内容に反感を持つ人は多いはず。


  背(せな)に載る飯粒知らずひたすらに飯粒探すあはれ土鳩は
  嘴に付きし飯粒気になれば土鳩は赤き足に払へり
  弟妹の前途護らん清らかに次代の皇民たれと遺言
  汝ゆゑに潤ひ知ると妻に謝すレイテに死せる陸軍少尉
  皇国の母たる途を進まれよ強く正しく朗らかなれと
  三年の別離の間も変はらざる愛を捧げし妻に謝したり
  この身東亜の涯に果つとも魂魄は九段に在りと妻を励ます
  魂魄は九段社頭にとどまりて家族を護ると遺言にあり
  他人事に見ゆる御製に眉ひそむ幾百万の戦死者の霊