天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

出征

 靖国神社拝殿社頭掲示が替った。パンフレットの初めに明治三十九年作の明治天皇御製がある。

       秋夕
  国のため うせにし人を 思ふかな
  くれゆく秋の 空をながめて


「出征」と題された遺書は、昭和十二年九月末に江蘇省で戦死した陸軍歩兵中尉のもの。


  八時から十二時の間に通過する新宿駅で妻に逢はむと
  習志野の原野に集ひ会食す生死を共にする戦友と
  会食は盛大なりき習志野の原野照らせる淡き月光
  いづれにせよ最前線に出征す女々しきことはするなと妻に
  すめろぎのながめたまへる秋空に歩兵中尉は妻をしのべり
  出征後一月もせず戦死せし歩兵中尉は三十三歳