天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

称名寺

称名寺の石仏

 京急金沢文庫駅に下りて称名寺門前にたどりつくのに、余計な道を歩いてしまった。何度もきたことがあるのに、ご無沙汰していると最短の道筋を忘れてしまう。横浜市金沢区にある真言律宗称名寺は、金沢山、稲荷山、日向山という三つの小山が出会う谷戸に建てられた堂塔伽藍であった。北條実時の力のよる。前方に平潟湾を望む山の中腹に彼の廟所がある。また珍しいことに、池のほとりに彼の胸像がある。中島をつないでいた橋の内、反橋だけが残っていて、平橋はない。広場には赤とんぼが群れ飛び、孔子木が欝蒼と枝を広げていた。なお、孔子木とは、牧野富太郎博士の命名だが、和名をトネリバハゼノキランシンボクという。
池の周り、裏山の散歩道には、老人の姿が目立った。


     アオサギに秋の朝日や阿字ヶ池
     大小の石に亀乗る日向ぼこ
     猛り啼く梢の鵙を探しけり
     山の端に尺八聞くや秋の蝶
     阿字ヶ池めぐれば枯るる彼岸花
     朝光の黄菊白菊五輪塔
     孔子木広場に群るる赤とんぼ
     下手な絵と鵙高啼けり阿字ヶ池
     彼岸花池の反り橋朱を競ふ


  金色のセイタカアワダチソウ生ふる堂塔伽藍跡の草原
  朝光の池に映れる反り橋の朱に交はりて緋鯉泳げり
  石像の百観音を寄贈せし昭和十年東京の人
  大いなる欅根方に腰おろし弁当ひらく老の一日
  絵を描きて一日すごせる老年をあざ嗤ふがに鵙高啼けり
  シチリアのブラッドオレンジ上陸すアル・カポネまた
  地下に笑へる