天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蓬莱柿

蓬莱柿(島根県HP)

 今月号の「古志」長谷川櫂主宰の句に、蓬莱柿(ほうらいし)が出てくる。これは出雲の多伎で、無花果のことをいうとある。はじめて知った。で、櫂主宰の俳句の二、三について感想を述べる。


  荒海の能登より二人月の客
  *月見の場所が不明だが、そこに加わった
   二人の客の容貌がなんとなく荒法師じみて
   感じられるから面白い。「荒海の能登より」の効果である。


  八雲たつ出雲無花果作るかな
  *「八雲たつ」は出雲の枕詞で、古事記の有名な歌の
   出だしを踏む。内容は、単に出雲で無花果を作っている、
   というだけなのだが。


  蓬莱柿とは無花果のことなりき 
  *七・五・五の変則調でまとめた。意味はまことに
   そっけないが、驚きと軽い感嘆の表現として工夫されている。


[参考]インターネットで「蓬莱柿」を探すと、島根県のHPに出ている。以下のような説明がある。なお右上の写真もそこから借用してきた。実に旨そう。


    江戸時代の寛永年間に中国から日本に伝えられた品種。
    貝原益軒によると十七世紀前期に江戸にもたらされ、
    「中国の蓬莱からきた 柿に似て甘い果物」という意味で
    この名前がつけられたらしい。熟すると星型に先が開き、
    小ぶりで非常に甘みが強いのが 特徴で、日本人には昔からの
    お馴染みの果実。