西海子小路
「さいかちこうじ」と読む。小田原の桜の名所といえば、先ずここを挙げたい。もちろん、小田原城園内の桜も濠のめぐりの桜も見ごたえがあるが、昔の武家屋敷に沿って長々伸びる道に、両側からかぶさるように咲く桜の並木は、もの思わせるロマンがある。
インドゾウ「うめこ」たゆたふ桜かな
花ちるや溜息つける雌の象
初つばめ早も声聞く箱根口
ひよどりが啼けば花散る文学館
さざ波の濠に散りこむ桜かな
水青む濠に流るる花筏
濠の水青みて映る桜かな
古城址の濠をめぐれる桜かな
尻赤き猿の檻にも花ふぶき
城郭の曲輪想へり楠若葉
もののふの暮し想ひて呆然と桜見てゐる西海子小路
花咲きてかぶさりきたり家々の土塀も長き西海子小路
車椅子みづから押せる老婆あり花咲き満てる西海子小路
時経れば美しきもの復元す桜ふぶける銅(あかがね)の門
咲き満ちて花ちりかへば初つばめ濠の水面に腹うちて飛ぶ