天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

石蕗

二宮町吾妻山にて

 ツワあるいはツワブキと読む。橐吾という難しい表記もある。キク科の多年草。観賞用に数品種ある。蕗に似た葉に光沢があるところから、「ツヤブキ」と呼ばれたらしいが、そこから転化した名前という。


     石蕗咲いていよいよ海の紺たしか   鈴木真砂女
     静かなるものに午後の黄石蕗の花   後藤比奈夫
     暮れてゆくものに手を藉(か)す石蕗の花 八田木枯


  たそがれは石蕗の花に早く来て今日を終らん檜葉垣のうち
                    堀江伸二
  ひとときに色ともしたるつはぶきが常世のもののごとくかがやく
                    二宮冬鳥
  日当らぬ庭に給える灯(ひ)のごとく茎たてて黄につわぶきの咲く
                    大塚善子
  つはぶきの丸葉の光沢(つや)よ人生はただ死体への道には非ず
                    高野公彦
  立冬の光集めて石蕗咲けり天耳(てんに)あるごとき聡きこの花
                    梶井重雄
  橐吾の花咲きゐたりけり八幡社裏藪かげの午後の日ざしに
                    清水房雄


 師走になると大方花は枯れている。