天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

烏帽子岩

浜昼顔

 茅ヶ崎海岸では、もう浜昼顔が咲いていた。ヒルガオ科の多年草である。はかなく見えるが、砂の中の地下茎は横に走り、地上茎も長く這い回る。


      昼顔や此道唐の三十里     蕪村


  肺尖にひとつ昼顔の花燃ゆと告げんとしつつたわむ
  言葉は              岡井 隆

                       

 湘南・茅ヶ崎は、この地出身の桑田佳祐率いるサザンオールスターズの基地であった。わが国のサーフィン発祥の地でもある茅ヶ崎海岸は、サザンの曲で一躍有名になり、今ではサザンビーチという名がついている。沖の烏帽子岩が象徴的。第二次世界大戦後、ここの岩場を米軍が射撃訓練の標的にした。辻堂にあった演習場から実弾を撃ちこんだ結果、烏帽子の形になり、そう呼ばれるようになった。


      ランナーは浜昼顔を顧みず


  サーロイン・ステーキ弁当の旗ゆるるHOKKA HOKA 
  TEI 駅前通


  エンジンの音底ごもる釣船が沖にたむろす茅ヶ崎の海
  茅ヶ崎の浜の岩場に子供らと青きシートのテント張りたり
  バーベキューの音じゅうじゅうと海岸にたちて残りの
  休みを憩ふ


  大いなるテトラポッドに立ちて釣る魚の姿今日も見えざり
  海に浮く鯨の背(せな)に人立つか弓手にかすむ江ノ島の塔
  烏帽子岩見むとはるかに目を凝らす茅ヶ崎生まれの宇宙飛行士
  つややかに飛沫に濡れて光りたりテトラポッドを這ふ黒き蟹
  烏帽子岩付近はもはや釣れざるか大き音たて釣船は去る
  サーフィンのメッカと言はむたゆみなく白波寄する茅ヶ崎の浜
  轟然と音ひびかせて空をゆく機影は見えず消ゆる波音
  気に留むる人も少なき砂浜にはかな気に咲く浜昼顔は
  丈低き防風林の松林枯れ落葉踏む足裏やさしき
  さかしまに宙に浮びて動かざりトイレの隅に巣を張れる蜘蛛
  喨々と風を孕みて空に浮く湘南凧の会の武者絵は