天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

生田緑地

生田緑地:ほたるの里

 多摩丘陵の一角に位置し、宮前区と多摩区にまたがる川崎市内最大の緑地である。日本民家園、青少年科学館、プラネタリウム、伝統工芸館、枡形山展望台、岡本太郎美術館などの施設がある。日本民家園や岡本太郎美術館は以前に見ていたので、今回は、枡形城址とほたるの里を歩いた。
 源頼朝が鎌倉に幕府を開いた頃、配下の稲毛三郎重成が枡形山を城とした。周辺の丘陵にも、山城や丘城がいくつも連なっていた。その後戦国時代に入り、北条早雲が府中立川原でたたかったとき、この城に入って陣容を固めたという。石碑がこの間の事情を伝える。
 句碑もある。

      馬場あともやかたのあとも秋の風  伊藤葦天

伊藤葦天は川崎市出身で虚子と同世代の俳人郷土史家らしい。インターネットで調べたが、はっきりしたことがわからない。


 ほたるの里は、丘陵の谷間にあって、オカノトラノオ、ユウガギク、ツリフネソウ、ノダケなどの植物が生え、榛の木ほかの雑木に囲まれている湿地帯である。


  「この木何の木」問ひかけの札立ちたれど木は見当たらず
  保育士が遊ばせてゐる園児らの声かしましき桝形城址
  案内板のみに残れり遊園の大観覧車まはるまぼろし
  蛍の棲むとふ谷の木道をゆけば朝(あした)のカラスが騒ぐ
  笹刈を中止せよとの注意書 生田緑地の蛍まもらん
  平成の源氏蛍が火を点す生田緑地のほたるの里に
  夕さればほたる火点す谷間の湿地に高きハンノキ林
  カワニナを食ぶるホタルの幼虫にさはりなからんドクダミの花
  子育ての鴉棲むらし木道に風切羽根の音すさまじき
  向ヶ丘遊園といふ名をたのみ子と尋ぬれば宅地なりけり
  頭を起こしあたりながむる乳幼児かく腹筋は強くなるらし
  大あくびせる乳幼児目は澄みて母を見上ぐるうれひなき顔
  記憶にもとどまらざらむ乳呑児が母に抱かれて乗る小田急