天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

茂吉のラブレター

野萱草の花(稲村ガ崎)

 「俳句四季」9月号に、アララギ派歌人の藤岡
武雄が、「斎藤茂吉の短歌と俳句」という題で一文
を書いている。私にとっては、茂吉に関する新しい
情報であり、大変面白かった。そこのところを箇条
書きにしておく。


 *茂吉は俳句を57句作っている。但し、手紙に
  書き添える体のものであり、特に作品として意識
  したものではなかった。例えば、

      忽然と牛の寝てゐる冬野かな
      鮟鱇の皮の黒きを愛しけり
      冬の夜に人をののしる愚劣かな


 *永井ふさ子に書いたラブレターの数は150通に
  のぼり、アメリカではこれらを1億で買い取りたい
  という話もあった、とか。(何故アメリカなのか不明)
  茂吉は52歳で26歳の永井ふさ子に恋をして、
  このようなラブレターを書いた。


 *茂吉の短歌に学んだ俳人に、山口誓子中村草田男
  沢木欣一 などがいた。ちなみに、永井ふさ子
  中村草田男との見合いに撮った写真を茂吉は手に入れて、
  肌身離さずもって、件のラブレターを書きまくった、という。


 後世に実にあからさまな手紙がさらけ出されていることを知って、泉下の茂吉は怒り心頭に発しているであろう。あるいは、人間の素直な心情が出ている恋文の例だと、涼しい顔をしているであろうか。