天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

破れ蓮の池

カワセミ(光明寺にて)

 材木座光明寺に入り、本堂から左手に渡り廊下を通って縁側に座り、じっと破れ蓮の池を見ていた。初めはわずかに亀や鯉の姿を見るのみであったが、やがて、翡翠が飛んできた。あを鷺が石橋の下にいることに気づいた。ヒヨドリが飛び交う。鳶が池の面の何かを狙ってかすめとぶ。一見静かな破れ蓮の池にも様々な訪問者がある。実はこの庭園、小堀遠州作と伝える名園なのである。


  破れ蓮の池の底這ふ亀ひとつ時に水面に首だして浮く
  根気よく水面見つめて動かざり枝にとまれるひとつ翡翠 
  池の上の枝にとまれる翡翠はいくども池に飛び込みにけり
  あを鷺も翡翠もくる破れ蓮の池に小春の朝日射したり
  枝うつりすれど翡翠離れざり時折潜く破れ蓮の池
  大いなる嘴黒く光りたり枝に止まれる朝の翡翠
  法要の声聞く朝の池に立つ大きあを鷺ゆうるり歩む
  翡翠の発つまでを待つ縁側に小春日和の朝日さしたり