わが歌集からー鳥類(4/15)
鷺 25首
秋雨に釣糸垂れゐる多摩川の中州におり来る白鷺の二羽
水底に脚差し入れてまさぐれる鷺のまなかひ泥鰌飛び出づ
白鷺(しらさぎ)の飛ぶ夕暮れの多摩川に漕ぐことやめしボートのふたり
白鷺の空のかよひ路よぎりける鴉に気付き姿勢乱るる
放牧の牛のめぐりを離れざり虫飛び立つを待てる天鷺
純白の孤高のいのち白鷺は家族の記憶消して旅立つ
春分の日の北風に身をすくめ魚くるを待つ浜の白鷺
白鷺の影を映せる綾川の土手下りくれば雲井宮跡
卵より孵りて今は川に佇つ白鷺朝の餌を狙へり
落鮎を獲りゐし鷺の群はなく冬の朝日に締まる川原
むれ飛べる鷺の白さをまぶしみてしばしのけぞる朱(しゆ)のみそぎ橋
白鷺の歩み見つめて動かざる黒猫の背のまさに平たく
まだ青き稲田に降りる白鷺の白をまぶしむ帰郷なりけり
白鷺の前に浮び来上流へ水面をかけて河鵜発ちたり
ぶるぶると足震はせて水底の生き餌追ひ出す朝の白鷺
大き魚呑みこみぬらん青鷺のおもく川面を飛びたちにけり
潜水の二羽のウミウがしばしして水際の鷺のまなかひに浮く
この川に命をつなぐものの数アユの溯上を白鷺が待つ
五位鷺が木末にとまり見下ろせる鰻棲む池浜松あたり
うかび来し鵜は青鷺の足元に 顔見合はせて驚きにけり
耕して地中の生きもの出でくればトラクターを追ふアマサギのむれ
アオサギに生まれし命ながらへて町川の辺にカエルなど獲る
養鰻の池さわ立てり春(はる)朝(あさ)の影きはやかに鷺のはばたく
さはがしきカモメの群を避けて佇つ池のほとりの一羽アオサギ