天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

師走の吾妻山

北斎の富士・梅沢庄

 二宮町の吾妻山では、はや菜の花がほころび水仙の花が匂い始めた。周知のように、この山には、弟橘媛命を祭神とする吾妻神社、木花咲耶姫(このはなさくやひめ)を祀る浅間神社がある。こうした環境からか、このあたりは昔から長寿の里と呼ばれた。山頂から西方を望めば、白雪を被った霊峰富士が見える。この景色を葛飾北斎が「富嶽三十六景」に「相州梅沢庄」として描いた。


     年逝くや波の白穂かユリカモメ
     吾妻山菜の花にほふ師走かな
     湘南の山にかをれる雪中花


  紅葉の山の奥処に富士といふ三角錐の雪のマッスは
  釣りあげし魚を図鑑と見比ぶる朝光の中うろこ光れり
  うち寄する波の白穂とたはむるる鷗の群は数を増やせり
  兄弟の猫の子と見ゆ三匹が餌にありつく橋脚の下
  軒下に鯵、鰤、槍烏賊、大平目今朝の入荷と貼紙はあり
  さはがしき園児らつれてのぼり来しもみぢかがよふ湘南の山
  朝光の葉ずれさやけき吾妻山師走の風にもみぢ散るなり
  吾妻山冬の朝日に咲きにほふ菜の花見ればいのちながらふ