天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

春潮

早春の海

      潮音寺春潮の音聞く寺か
               山口誓子
      春潮や逗子鎌倉の闇に村
               永井東門居
      海人(うみんちゅ)の櫂もてば鳴る
      春の潮      堀口星眠


 早春の湘南海岸に寄せる潮の色は、希望に満ちた淡青である。食欲をそそる健康な色である。余寒のひと時、二宮海岸に座ってこの春潮を見ていた。
      突堤に添ひて高まる春の潮
      底深き海鳴とくる春の潮  
      海鳴が体ゆさぶる余寒かな
      残雪や低くなりたる三原山
      宝永の火口に雪のかげりかな
      足引きの山のなだりの水仙
      ま向かひてただ立ち尽くす春の富士


  潮しぶく立入禁止の突堤に釣糸垂るる余生なるらむ
  春潮の波頭と白さ競ふべく日にかがやける残雪の峰
  百メートルを越ゆる津波のくるといふ小惑星の衝突の時
  冬枯れの梢つつけるキツツキの姿目に追ふ如月の森
  どこまでも青き海原昨夜ふりし雪のこりたる大島の尾根