天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

中学生のあなたに

石上神宮

 3月2日の「短歌人」横浜歌会が終った後で、川井怜子さんから、『―中学生のあなたに―万葉集へのいざない(その十)』という50ページほどの小冊子を頂いた。横浜の浦島丘中学校コミュニティ・ハウスというNPO法人が企画して、はや十五年になる「万葉集を読む会」の平成十九年の成果である。内容は、中学生にわかるように配慮して、万葉集の歌につきメンバーが手分けして解説している。家庭の主婦や熟年男性からなる二十数名のグループらしい。
 実によくできた解説書だ。例えば、川井さんは、自ら短歌を作っているので、万葉集一首の解説には、短歌技法としての特徴も説明している。他のメンバーでは、実際に飛鳥の地を訪れた思い出をまじえている人も。嬉しいのは、大伴家持の弟・書持の


  玉に貫く楝を家に植ゑたらば山霍公鳥離れず来むかも
 (たまにぬくあふちをいえにうゑたらばやまほととぎす
  かれずこむかも)


など、普通あまりみかけない歌も取り上げている。
中学生はもちろんのこと高校生にも熟年の人達にも読んでもらいたい冊子である。従来の研究成果も踏まえて内容がよく整理されてこともあるが、歳をとっても生きがいを感じる楽しい勉強があることを教えてくれる。元気がでてくるのだ。
 横浜の教育委員会で、中学・高等学校の副読本にしてみたらどうか。また、これまでの冊子分もまとめて一本にして、販売してみては如何。
今までにも奈良には、数回行ったのだが、この本を読んであらためて万葉集ゆかりの地を訪ねてみたくなった。例えば、右上の画像に引用した
http://kamnavi.jp/mn/nara/isokami.htm
で紹介されている石上神宮。この地を詠んだ柿本人麻呂の次の歌に惹かれる。


  未通女等が袖布留山の瑞垣の久しき時ゆ思ひきわれは
  (をとめらがそでふるやまのみづがきのひさしきときゆ
   おもひきわれは)