天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

西海子小路の桜

小田原西海子小路

 正午を過ぎたところで、芋焼酎「魔界への誘い」をオンザロックで呑みながら、米国におけるレッドソックとアスレチックスの開幕戦を観る。松坂が日本での開幕戦に続きまた開幕投手で登板している。至福の時。ただ、一週間ほど前から右の顎がものを噛むたびにうづくのが面白くない。
あれ?! 二回に入ったとたん、松坂がホームランを打たれた。日本でも一回目でホームランを打たれ、2点を献上したばかりなのに。
 朝早く小田原城の桜を見に行き、十一時すぎから始まるこのMLBの放映を見るべく帰宅したのである。桜咲く時期のわが定番コースのひとつであるが、小田原城、西海子(さいかち)小路、白秋童謡館、山角天神社などを歩いた。この山角天神社は多分、地元の人たちしか訪れないだろうほどに小さい。ここには、北条時代に描かれたという菅原道真「怒り天神」の絵が祀られている。境内には、「有米家可耳及都登日能伝る山路閑難(梅が香にのつと日の出る山路かな)」の句碑がある。これは文政三年(1820)に建てられた。
 終った。レッドソックスが1点差で勝ち、松坂が今期一勝目をあげた。松坂が7回で降板した後、岡島、パペルボンと繋いだ結果である。
  ああ、酔ってしまった。まだ三時だが、ひと眠りしよう。


      花咲くや象のウメ子は落ち着かず
      白椿一輪おちて甃(いしだたみ)
      砲撃の演習聞こゆ花吹雪


  相容れぬ人多ければ鬱ふかき会社休みて花を見にゆく
  小田原城朝のひかりに咲き満ちて今日をかぎりに花は散るらむ
  老いの手にかなしき曲を爪弾けり花咲き満てる公園の朝
  老いどちのひとりふたりとのぼりきて花の下なるベンチに座る
  還暦をいうに越えたりしかすがに象のウメ子はつやめきて生く
  壁に向き象のウメ子はしばらくを前の片足あげて佇む
  ひよどりが桜の花をちらす間を象のウメ子と吾と見てゐつ
  長き鼻に水道水を汲みあげて空にふきだす象のウメ子は
  砲声のとどろく空をいぶかしみ花咲き満てる城をめぐりぬ
  自動車の絶えたる時を待ちて撮る花の回廊西海子小路
  江戸末期中級家臣の武家屋敷十八ありし西海子小路
  花咲ける西海子小路の中ほどに小田原文学館の入口
  咲きみてる桜の根方ごはごはとゴミの袋が回収を待つ
  道真の画像祀れる天神社北条時代の「怒り天神」
  菅公の怒り少しはやはらぐか梅ちる後にさくら花咲く
  松坂を見むと家路をいそぎけり小田原城のさくら見し朝
  花を見て帰る電車のアナウンス耳にひびかひ鬱いや増せり
  はやばやと打たれにけりなしかすがに松坂投手の粘投を期す