天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

葉山森戸海岸

森戸海岸にて

 雨が降りそうな気配の中、海開き間近な葉山森戸海岸に行ってみた。特段の理由はなく、気まぐれに逗子駅に下りたついでに思いついたまでである。何度も来ているのだが、新しい発見があった。西東三鬼の句碑を見つけたのだ。今まで気付かなかったことが迂闊であった。三鬼は晩年を葉山町堀の内562番地に住み、このあたりの海岸を愛犬ラッキーを連れてよく散歩した。死の一年半ほど前に詠んだ次の代表句が、平成十一年四月一日付で碑になった。
      
      秋の暮大魚の骨を海が引く


 森戸海岸から山路に入って、三ケ岡山緑地を歩いた。急峻な坂道を汗かきながら小高い山に登り下って「かながわ花の名所100選」あじさい公園に出た。


      奉納の砲弾見ゆる茅の輪かな
      まくなぎが行く手をはばむ青き山
      山百合の峠にのぞむ富士の嶺
 

  海が引く大魚の骨と句に詠みし浜に並べるビーチパラソル
  みそぎ橋 『吾妻鏡』に記されし七瀬祓の霊所なりけり
  鼻、頬に手擦れのつやの著し森戸海岸の青きレリーフ
  入口にまむし注意の札立てばわが足すくむ山路なりけり
  ひとところ明るく見ゆる山道にまくなぎ立てりゆきがてなくに
  まくなぎが待ち構へたる山坂にほとほと死にきわが息切れは
  いただきの見えざる坂の苦しさはメタボ予防と思ひて耐ふる
  あづまやを隠せる木々の山頂を鳶が見下ろす葉山の空に
  紫陽花の群にまじれる山百合のかをりはいろにまさるなりけり
  「幻の瀧」とふ冷酒ひとり呑む肴はめざし、げそのピリ辛