天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雨降山

雨降山(但し早春の景)

 現在は、大山の名で親しまれている。古来より山嶽神道の拠点であり、古くは大福山とも呼ばれていたらしい。相模灘を航行する船の目安になった。右の写真は、一月末に撮ったもの。大山阿夫利神社は、大山祗大神(オオヤマツミノカミ)、高オカミノ神(タカオカミノカミ)、大雷神(オオイカツチノカミ)の三神を祀り、海運・漁獲・農産・商工業などからの信仰を集めている。
 以前は、年に二回は頂上まで登っていたが、近年は遠くから見上げるだけである。今回は、相模川の宮山河岸から眺めた。茂吉歌集『石泉』を携えてきたのだが、自分で詠む歌には、なんの影響も無いことが虚しい。


      左目のかすむに耐ふる残暑かな
      雀跳ぶ畑に垂るる茄子かな
      梨ふとる紙の袋をはらませて


  釣糸を垂らす河辺にぶおおぶおお鳴き出だしたる牛蛙かな
  静かなる水面やぶりて跳ぶ魚の音におどろく八月の川
  名にし負ふ雨降山の頂きに雨ふるらむか雲にかくるる
  夏草のしげれる岸ゆさざ波のひろがり来たり川風の道
  相模川鏡のごとき水面の上手下手に魚の跳ぶ見ゆ
  閃光を放てる白き塔ありてその影映す相模川の面
  老人のふたりが飲めるオロナミン鉄路に沿ひて昼顔咲けり

       ニュース映像を思った
  水温の高き川面に死魚あまたただよひ流る八月六日