天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

桔梗

鎌倉・長谷寺にて。

 キキョウ科の多年草。古名はオカトトキ。キチコウとも。秋の七草の一つ。次の漱石の句は毎年のように紹介しているが、桔梗となればはずせない。



     仏性は白き桔梗にこそあらめ  夏目漱石
     山中に一夜の宿り白桔梗    野澤節子


  白埴(しらはに)の瓶に桔梗を活けしかば冴えたる秋は既に
  ふふめり                長塚 節   
  紫に隣りて咲ける白桔梗今年は紫の縞を持ちたり
                      和田周三
  哀しみの存在よりもほのかなるこの一夏の桔梗(きちかう)の花
                      山中智恵子
  立ちあがるものの気配や桔梗(きちかう)の藍とどこほる庭土
  のうへ                 高嶋健一          
  ゆつくりとむらさきを消す桔梗(きちかう)のあはれ天涯の色と
  なりつつ                坂井修一
                      

 長塚 節は、「白埴の瓶」をいくつもの歌に詠んでいる。日常生活に馴染んだものだったのだろう。