天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

時間を詠む(2)

ロンドンの時計塔(ビッグベン)

 時の移り・間隔を測る仕組みが時計である。時計により初めて時間が具体的に認識できる。時計は今から6000年ほど前にエジプトで誕生したという。最初は日時計であった。それから水時計、燃焼時計、砂時計 などと続く。
 高瀬一誌さん(故人)は、私が短歌人に入会した時に師事した歌人であった。彼の歌の特徴は、次に見られるように三句目を省いてしまうところにあった。高瀬家の墓は鎌倉円覚寺にあるので、時折寄って手を合せる。


  酔い方が下手になりしとあわれまれるに時間かからず
                     高瀬一誌
  物置きの如きわが部屋に埃たて一年の時間をはたき出しをり
                     藤岡武雄
  時間差あり起き来る子らの一人一人朝刊はまづテレビ欄読む
                     宮地伸一
  秋立つと過去の時間をたどりつつ八角時計鳴りはじめたり
                     大石久美
  夫も子も忘るる時間が欲しといふ女の嘘も聞き飽きて聞く
                     築地正子
  フォークダンスのように相手を替えながら時間通りに
  終わるパーティ            俵 万智


  手が見えて顔見えるまで壁ぎわに母が立つまで濃く時間あり
                     今井恵子