天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

探梅行(2)

熱海梅園にて

 今年もまた熱海梅園に行ってきた。梅まつりの初日である。この梅園の由来は、入口の碑に書かれている。明治六年文部省初代医務局長になった長与専斎が明治十八年にわが国初の温泉療養施設開設に伴い、この地一万坪に梅三千株を植えたのが始まりという。その折、茂木惣兵衛が資金を提供したことで「茂木氏梅園」と命名されたが、通称の「熱海梅園」が定着した。次のような種類があるらしい。


故郷の錦: 早咲き淡紅八重の中輪、つぼみは花より濃いピンクで、
      咲くと弁が波打つ。
緋の司:  早咲き紅八重の中輪、明るい紅。実も早くから赤味
      がかって美しい。
八重唐梅: 早咲き紅八重の中輪、夫婦のように寄り添うので別名
      「夫婦梅」とも。
鬼桂花:  中咲き白八重の中輪、白花の中にごく薄い紅色の花が
      まじることあり。
内裏:   中咲き裏紅八重の中輪、桃の節句が近づく頃、花盛り
      を迎える。
月影:   早咲き白色一重の中輪、ガクまで青味がかり野梅の白
      とは違った色合い。
思いのまま:中咲き淡紅白色八重の中輪、同じ枝に紅と白、紅白半々
      と三つの顔をもつ。
紅千鳥:  中咲き紅一重の中輪、雄蕊まで紅色。
見驚梅:  中咲き淡紅八重の大輪、見てあまりの美しさに驚く
      ところからの命名
金光梅:  遅咲き淡紅一重の中輪、最も遅く桜と共に咲く。
楊貴妃:  中咲き紅八重の大輪、絶世の美女の名にふさわしく
      一目でそれと分かる。


  梅の花今盛りなり百鳥の声の恋しき春来たるらし
                   万葉集・田氏肥人


 梅園の丘にある中山晋平記念館の庭には、ヒマラヤが原生地というキバナアマの黄金色の花が咲きほこっていた。


      初川の源はここ黄鶺鴒
      梅園の笑みこぼれたる足湯かな
      青空に真白かなしき梅の花
      梅園や熱海ばやしの笛、太鼓
      梅の花十郎、五郎それぞれに
      梅園の風に吹かるる黄水仙
      川の辺に紅き梅咲く解脱門
      目白きて熱海櫻をはやしけり


  三味線の音たしかむる鉢巻の首筋さむき熱海梅園
  オンドルの煙家の横のチャントッテ瓶が弾ける朝日まぶしも
  梅園を行き交ふ人をよけにつつマスクはづして蝋梅を嗅ぐ
  赤錆の砲弾据うる忠魂碑乃木希典の筆跡なりき
  十二時のチャイムを聞きて坂くだる糸川縁に櫻咲きたり
  目白きて飛び交ひにけり赤き実のクロガネモチと櫻の花と
  たかひかる日に蒼澄めり釣舟のあまたうかべる大磯の海