春の里山(1)
雪の消えた里山・新林公園(藤沢市)を歩く。古民家の前の小さな梅の林には花が残っていた。今まで気付かなかったが、どの木も白梅と薄いピンクの紅梅が混在していた。花梅には「思いのまま」といって、淡紅と白、紅、絞りなどを1本で咲き分ける種類があるので、驚くことではないが。
この日は晴天であたたかでわずかに春風が吹き、鶯が滑らかな声で啼いていた。
里山に孫あそばせて春うらら
椋鳥が田返しを待つ山田かな
予備校の成果張り出す春の町
ウヰスキーの呑みすぎなれや酔はざれど腹の痛みに
一夜眠れず
松消えて欅、桜の並み立てる旧街道に夏蜜柑もなる
道の辺になりてかがやく夏蜜柑旧東海道の鉄砲宿に
うらうらと照れる春日に身をまかせ夢見るごとく
里山をゆく
梅の花咲きのこりたる里山に三寒四温の日は続きをり
里山の木々のすがしき呼気なれど花粉恐れてマスク
はづさぬ
太枝をおとせし後に虚(うろ)ありて雨のたまれば
小鳥水浴ぶ
枝張れるムクノキなれど春きても真裸なればムクドリ
を見ず
ムクノキとムクドリの歌ジョギングの女と出会ふ春の里山
汗かける肌にすがしき春風のベンチに坐る里山の路
真裸のケヤキの梢くろぐろと鳥の巣かかる春の日差しに
うぐひすのこゑなめらかになりにけりいまだほどけぬ
辛夷のつぼみ
剪定の傷口にぬる木の薬虚をふせぎて肉もりあげる
弁当をベンチに開く老夫婦鳩ら寄り来てしばらく見上ぐ