天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

春の山

幕山にて

 今年も2月11日から始まっている湯河原梅林「梅まつり」に出むいた。例年、梅の花が満開にならない時分に出かけていたが、今回は満開であった。幕山の麓一面が梅林なのだが、周囲の冬枯れの色に埋もれてしまってあまり目立たない。久しぶりに幕山の頂きまで登ってみた。最近、まともに歩いて山に登っていなかったので、苦しかった。くしゃみしている人が多かったが、花粉症であろう。杉の木立には凶悪なくらいにびっしりと雄花がついていたので、春一番にのって花粉が飛散したのだ。かく言う我輩も、くしゃみは出ないが目が痒くてたまらない。


      換気扇春一番を知らせたり
      初島に波の寄る見ゆ春の山
      天がける風の音聞く春の山


  「ケイタイが震えている」と膝の上のバッグまさぐる
  女なりけり


  杉の花けぶる木立を吹き鳴らす春一番の山間の風
  幕山の冬枯れ色にまぎれたり目白とび交ふ花の梅林
  梅林のくれなゐの雲下に見て岩よぢのぼる如月の風
  しばらくを脚鍛へねば顎ばかり出でて進まぬ幕山の道
  わが命ここにあること知らしめて心臓うごく春の山道
  標高は六百二十五メートル坐して汗拭く山の頂き
  初島のめぐりに寄する白波のかすめるが見ゆ春の山頂
  アベックの女が少し遅れきてクシャミ止まざり春の
  山路に


  まなかひに柱状節理の崖はありシャツ着替へれば
  山川の音