天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鴫立沢

大磯・鴫立庵にて

 山桜の花はもう散り始めているが、ソメイヨシノはまだ三分咲き程度。そんな情景を見に湘南平に登ってみた。以前にも紹介したが、ここは神奈川県の平塚市と大磯町の境にある標高181mの丘陵である。今日はとにかく寒かった。電車を待つ間、ホームのベンチで震えていた。咲き始めた桜の花も朝風に震えていた。
 いつものように山を歩いた後、大磯の鴫立庵に寄った。珍しく庵の縁側近くにテレビを置いて大磯町の観光スポットのビデオを流していた。円位堂にある等身大という西行法師像の写真を撮ってきた。毎年三月末の日曜日に西行祭がこの庭で開催される。


      錆つきて散るを寂しむ白もくれん
      花ちりて鱗に見ゆる山路かな
      マスクせる息荒々しすみれ草
      山路きて息ととのふる著莪の花
      花馬酔木藤村夫妻の墓ならぶ
      さくら咲くバイク修理の軒先に


  雪雲のかかれる空の朝風に桜は白き花ふるへたり
  道にたれし太枝切られし桜木の細枝にさみし今年の花は
  杉花粉ふせぐマスクの息荒し山路に咲ける立壺菫
  いにしへのやぐらの谷戸にちりしけば鱗のごとし山桜花
  優美なる湘南平の山谷のところどころに咲く山桜
  ながながと消防ホースをひき回し鴫立沢の落葉流せり


 西行と言えば、何年か前に奈良県・吉野の山奥に西行庵を訪ねた時のことを思いだす。ここはまだ花の盛りであった。「古志」四月号・同人「花の一句」に載った次の句はそれを詠んだもの。


       深き山西行庵は花の中