天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

むくろじ

藤沢新林公園にて

 ムクロジ科の落葉高木。六、七月に梢に円錐花序を出して、淡い緑色の小花を多数つける。十月頃に熟する実は追羽根の球に用いられる。漢字では、無患子と書く。


  森の中の無患子のもみぢ黄に照れば心に梯子を
  掛けて見てをり        前川佐美雄
                        
  手に取ればぬれぬれとせる無患子の殻に黒き実
  透けるかそけさ        林 善衛
                        
  野の繭の絹を濯はむむくろじのみづいろ若葉
  さやぎあふなり        石川不二子
                        

 よく散歩にでかける藤沢の新林公園の古民家の裏に、無患子の大木が聳えている。葉が鬱蒼と茂って背が高いのと回りに他の木々が立っているため、かえって目立たない。


  むくろじの大樹の梢ミツバチの羽音すさまじ花穂ふりやまず
  八つ手葉に黒羽根ひとつ落ちたれば主のカラスの行方思ほゆ
  二の腕に龍のタトウの黒ずめる男と出会ふ里山の朝