天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

木賊(とくさ)

藤沢新林公園にて

 シダ類トクサ科の常緑多年草。茎に珪酸を含み蓄積して硬化するので、砥石に似て茎でものを研ぐことができることから、砥草の名がある。茎は煮て乾燥させたものを紙ヤスリのようにして研磨に使う。高級なつげぐしの歯や漆器の木地加工、木製品の磨き仕上げに使用される。身だしなみに気を遣った音楽家滝廉太郎は、常々トクサで爪を磨いていたという。



  鬼怒川の土手の小草に交りたる木賊の上に雨晴れむとす
                      長塚 節
  隣家に木賊分けむと言ふ妻をみつ見凝めをりわが「寂しき人々」
                      宮 柊二
  折れて伸ぶる木賊一群中空の思想といふを如何に束ねむ
                      安永蕗子
  ゆふかげの中に木賊は群立てる青銅の針のごとき寂けさ
                      杜沢光一郎