天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

一人静

相模原市城山かたくりの里にて

 丘陵の林にはえるセンリョウ科の多年草。茎頂に鋸歯のある四枚の葉を出し、早春に葉の間に花軸をつけ白い細かい花を穂状に一本に咲かせる。北海道、本州、四国、九州に分布。
 名前の由来は花の可憐さを静御前になぞらえたもの。花穂を2本以上出す近縁種のフタリシズカもある。


     常臥しは一人静といふべかり    森 澄雄
     一人静二人静や歩きをり      森 澄雄


  ひとりしづか白糸の花立てて咲く四月を待たむ妻なしわれは
                      松村英一
  一人静眉(まみ)をひらける木の下にいまだしめれるきぞの夜の雨
                      土屋文明
  虎耳草(ゆきのした)の葉群の上に茎抽(ぬ)けど隠るるごとし
  ひとりしづかの花            宮 柊二


  ひとりしづか松の根方に植ゑむかと思ふまで今の心やすけし
                      柴生田稔
  仕事好きと見做さるる身を悔やまねど銀線草(ひとりしづか)の
  花も過ぎゐる              大西民子


  せはしさに在り馴れし身は今日山に一人静の穂を見いでたり
                      伊藤雅子